出版文化を製本で守る使命

 

出版関連業界は、今後も厳しい状況が続くと予想されますが、私は製本に付加価値をつけることによって、利益を享受できると思っています。私は「トリアージ」という言葉を使うのですが、印刷製本業界は今後ますます企業数が多い中で出版点数・部数が小さくなっていきますので、企業のトリアージが必要であると考えています。

トリアージつまり優先順位を決めるという事ですので、企業はお客様の中での優先順位を上げ、選ばれ続ける会社になることが必要です。では自社が選ばれ続ける会社になるためには何が必要なのか?ネームバリューや伝統もその要素かもしれません。しかし納期に間に合うようにお客様の要望通りに間違いなく「美しい本を作る」という信用・信頼が、当たり前のことですが重要であると思っています。

弊社は当たり前のことを当たり前にするというただ普通のサービスを実直に守り、お客様の立場に立ってきめ細かいサービスの提供をしてきました。また、製本に関する知識をフル活用し、お客様の要望に寄り添った提案を差し上げてきました。その上で今後はお客様に今まで以上に付加価値を与える事が選ばれ続ける会社になるために必要であると思っています。

弊社は創業1901年、今年で124年目を迎えることになり、創業から現在に至るまで製本業一筋で経営しています。私の祖父の「会社を必要以上に大きくする必要はないし製本業一本でやっていくんだよ」という言葉は、今でも私の心に大きな影響を及ぼしています。企業は尖っていくこと、他社との差別化が重要ですが「弊社にとって一番尖りやすいのは?」と考えた時、やはり製本業であり、祖父の言葉そのままであると思います。弊社は今後も製本業一筋に付加価値をつけ、もっと尖っていこうと思っており、お客様が手に持った時に「いい本だよね」「すごく収まりがいいよね」と言っていただける。本の中に何が書いてあるのかではなく「本の作り」を褒めていただける「牧製本がつくる美しい本」をこれからも作り続けていきたいと思っています。

「製本業を通じて出版文化の継続・発展(存続繁栄)に貢献する」これが弊社の経営理念です。私は弊社に入社し、改めて出版業界における弊社の存在の大きさを知りました。どこの会社にお邪魔しても、業界の集まりに参加しても、「牧製本さんですか?いつもお世話になっています」「あなたは牧製本さんのどなたの息子さんですか?」と決まって声を掛けられる。営業活動を続けていく中で、出版業界と弊社のつながりを強く感じ、出版業界における弊社の使命を強く感じるようになりました。「間違いのない本、美しい本を世の中に提供するという使命を全うしよう」という企業理念の一つとして、この思いを掲げ会社全体で共有しています。

私は、人は誰しも生まれてきたからには何かしらの使命や役割が必ずあると思っています。「生きるってなに?」「何のために生まれてきたの?」「働くって何?何のために?」など、突き詰めて深く考えることが必要で、それにより、働くことに意味を持たせ、人生がより豊かになると思っています。そのようなことを考える機会を与える事、教える事、そして大人がその姿を見せる事など「教育」が重要であると強く感じています。

何か世の中の学びに本を活用してもらえれば幸いと考えおりますし、身近な地域としての板橋区の取り組みにも協力できればと思っています。例えば子供のころに本を読み考える習慣をつけるために、本を身近に感じ触れ合ってもらうために、工場見学や本作り体験的なことを企画できればと考えています。教育という意味もありますが「本の魅力を後世に伝えていく」という弊社の使命にも合致することだと思います。

 

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